2022年。じわじわと、レトロ インドネシアポップスの流行を感じているのは、私だけでしょうか。
80年代の曲、Utha LikumahuwaのSesaat Kau Hadirが、2022年4月末にSpotifyのバイラルチャートで15位にランクインするなど。
気のせいかもしれないけれど見逃せない、この流行のさざ波に乗り、今回は70・80年代のレトロインドネシアポップスを代表するグループ、Chaseiroを紹介したいと思います。
そうそう、「皆大好きChaseiro! 」という主語がデカすぎるこの記事のタイトルですが、この記事に辿り着いたあなたもその「皆」のなかに漏れなく含まれますよ・・!!(怖)
Chaseiroといえば、言わずと知れた70-80年代のインドネシア音楽シーンを代表するジャズ・ポップグループです。一曲聴けば、ノスタルジックさと都会っぽさが共存する魅惑のサウンドに惹きつけられ、さらに数曲聴けば、ジャズ・ブラジル音楽・シティポップなどジャンルを超えたマルチなサウンドにワクワクすることでしょう。
Chaseiroとは
1978年に結成した7人組グループ。(途中から6人に。)
ソロ歌手・作曲家としても有名なCandra Darusman率いる、インドネシア大学(Universitas Indonesia)出身の以下のメンバーから成るグループです。グループ名「Chaseiro」は、メンバーの頭文字から。
Candra Darusman (ボーカル,キーボード), Helmi Indrakesuma (ボーカル), Aswin Sastrowardoyo (ボーカル, ギター), Edwin Hudioro (フルート), Irwan B. Indrakesuma (ボーカル), Rizali Indrakesuma (ボーカル, ベース), Omen Norman Sonisontani (ボーカル).
グループは、1982年のアルバム”Ceria”を最後に、結成から3,4年ほどで活動を休止します。とても濃密な活動期間。ただ、その後再結成し、2001年に”Persembahan”、2011年に”Retro”、2014年に”Retro 2″と、ベストアルバム、セルフカバーアルバムをリリースします。
メンバー名を見た時に、「ボーカル多いな」と思った方!そうそう、それがChaseiroの魅力の一つでもあるんですよ〜。移り変わる声質の違う歌声が曲の雰囲気を豊かにしていてて、飽きない!そして重なり合う歌声は、時にゴスペルのような重厚感を感じさせます。ぜひ、そんなボーカルの厚みにも注目してみてください。
また、先ほども書いたように、ジャズ・ブラジル音楽・シティポップなど様々なジャンルの良いとこどりをした曲調、さらには歌だけでなくインストロメント曲もあったりと、楽曲の多彩さも楽しいポイントの1つです。
Chaseiroの代表曲
さてさて、ここからは私も大好きなChaseiroの代表曲を5曲ご紹介します!
Ceria
何回聴いてもワクワクする曲!夏の海沿いドライブにピッタリ!タイトルの”Ceria”は「明るい」という意味。「一人で落ち込んでるときでも、ためらわずに陽気な気持ちで」という前向きな内容の歌詞です。
1982年の4作目のアルバム「Ceria」の1曲目。アルバムのジャケ写は、メンバーがチェスを見つめたりボールやラケットを持っていたりと、なんだかごちゃごちゃしてるけど、楽しそう。1-2作目のアルバムからは人数が一人減って、この頃は6人になっていますね。
Spotifyでこの曲を聴くと、1:47あたりの音が飛んでますが、そこも時代を感じる良い味となっています。最高に盛り上がるサビでは、是非一緒に手拍子を!
Lautan Kenangan
“Lautan Kenangan”は、「思い出の海」という意味。3作目のアルバム”Volume 3″の作品。先ほど紹介した明るさ底抜けの”Ceria”とは裏腹に、”Lautan Kenangan”は波に揺れ動くボートに自分の気持ちを重ね合わせ、カモメを見つめて感傷に浸る・・というなんとも切ない内容の歌詞。
”Ah ah ah Uh uh uh”の歌声と、ベースやキーボードとの掛け合いも、ついつい聴き入っちゃう。曲をまだ聴いていない方は、この字面だけ見たら何のこっちゃですよね。Spotify音源の0:39あたりからの部分のことです。
この曲は、Candra Darusman作品を集めた2017年のオムニバスアルバム”Detik Waktu”で人気ジャズバンドMaliq & D’Essentialsによってカバーされています。Chaseiro版だと声と楽器の掛け合いだった”Ah ah ah Uh uh uh”は、Maliq版だと男性ボーカルAngga×女性ボーカルIndahの掛け合いになってるのも、おしゃれなアレンジ!
↓Maliq & D’Essentials
Dunia Dibatas Senja
Spotify音源の3:06に、ピカーンと隕石が落ちてきたような(?)、もしくは「アイーン」とも聞こえる(?)、不思議な音が聞こえるのは気のせいでしょうか!!気になる…。
先ほどと同様、3作目のアルバム”Volume 3″の収録曲より。このアルバムと同年の1981年、Chaseiroのメンバーでありソロ歌手としても活動するCandra DarusmanはFaris FMと、この曲”Dunia Dibatas Senja”をアルバム”Panggung Perak”でカバーします。このカバーバージョンも中々渋みが深くてかっこいい。
さらにCandra Darusman×Faris FMのコンビは、先ほどもご紹介したオムニバスアルバム”Detik Waktu”で再度この曲をセルフカバーします。そういえば2014年のTompiを交えたカバーもありました。Candra Darusmanは、自身でこの作曲をし、合計3度もカバーするというのは、相当お気に入りの曲なんでしょう。
タイトルの”Dunia Dibatas Senja”は、「夕暮れのはざまの世界」という意味。メロディーからは、ウィスキーと葉巻の香りのする大人な雰囲気を感じました。歌詞は、混沌とした世界を変えてみよう、という熱い思いが込められています。
↓Candra Darusman・Faris FM版
Kualama Menanti
2作目のアルバム”Bila”の1曲目。印象的なリズムのサビ、随所に遊び心を感じる楽しい一曲。間奏のクラリネットや、多種多様なパーカッションの使い方もお茶目で可愛い!
“Kulama menanti”とは、「ずっと待っていた」という意味。何を待っていたのか?というと、歌詞からは「メロディのあるムード」や「一緒にみんなで歌うこと」を待ってたそうです!音楽への愛が溢れた一曲です。
この曲はYouTubeでMVがアップされています(おそらく違法アップロードですが・・)。メンバーが馬に乗って歌うという、優雅だけどシュールな雰囲気が、面白いです。
Pemuda
1作目のアルバム”Pemuda”の一曲目。インドネシアではChaseiroの作品のなかで、おそらく一番知名度の高い曲なのではないかと思います。タイトルは「若者」という意味。「Keinginan luhur kan terjangkau semua(高い望みは誰だって手に入れられる)」など、ポジティブな内容の歌詞は、迷う若者の背中を押し、前へ進む勇気を奮い立たせてくれます。
ちなみに、4人組ポップスグループHivi!も、2019年にこの曲をカバーしています。40年の時を経たカバーですが、その力強いメッセージは全く色褪せることなく、現代の若者にもきっと響くことでしょう。
↓Hivi!によるカバー
Chaseiro界隈をもっと知りたい方へのおすすめ記事
さて、ここまでChaseiroの情報を紹介しました。この記事を読んで、Chaseiroや70-80年代あたりのインドネシアポップスについてもっと知りたい!と思った方へ。
-福岡在住DJ河津さんのブログAFTERGLOW の記事。熊本シティエフエム「セレナ・セラータ」で紹介されたChaseiroやCandra Darusman作品を、記事でも紹介しています。
https://afterglow-m.blogspot.com/2021/07/sound-of-afterglow-vol16-chaseiro.html?m=1
-「アジアのポップスを聴き倒す会」主催のYuki Leeさんが、FMおだわら「アジアのポップスを聴く時間‼︎」でCandra Darusmanの曲を紹介してました。その他の紹介曲も素敵!文字起こしをしたパーソナリティIZUMIさんの労力にも拍手。
https://note.com/hwasaem_eumak/n/n8f50664a1320
-BRUTUSでインドネシアの「ポップ・クレアティフ」が紹介された衝撃の記事。これを読めば70年代から現代までの「ポップ・クレアティフ」の流れが分かる!今回ご紹介したChaseiroの”Ceria”のジャケ写も載っています。
https://brutus.jp/indonesia_citypop/?heading=2
-拙文ですが、お気に入りの80年代インドネシアポップス10曲を紹介しました
最後に
他にも、Chaseiro関連でご存知の情報、おすすめの曲などありましたら、コメントや各種SNSのDMで教えていただけますと幸いです!今回もお読みいただきありがとうございました。それではまた。
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