最近すごくハマってしまったバングラデシュ出身歌手Dameer🇧🇩。まだまだ、若手歌手ということで曲数は多くないですが、その分1曲1曲を繰り返し聴いて楽しんでいます。
Dameerについては、「アジアのポップスを聴き倒す会Podcast編Vol.3」でもご紹介しましたが、「Dameerの天才っぷりを文字でも伝えたい!!!」と思いこの記事を残します。Podcastと併せてお楽しみいただけると嬉しいです😄
Dameerプロフィール
Dameerは、バングラデシュ出身の、シンガーソングライター。バングラデシュで生まれ、10代後半の3年半をマレーシアで過ごし、ガーナにも数ヶ月間滞在し、さらに2022年現在はカナダの大学に通う。このマルチカルチャーのバックグラウンドを生かし、多彩な音楽を生み出している。
14歳頃から曲を作り始め、16歳頃からレーベルへ曲を送ったり、デジタルプラットフォームに曲をアップロードし始め、国際的なレーベルMajestic Casualと契約。ただし、2022年現在は、インディーの自由さとスピード感というメリットを重視し、レーベルを離れている。その辺りの思いは、こちらのインタビューで熱く語っていて、音楽業界での自分や周囲との関係をしたたかに捉えている様子が窺える。
Dameerの父親は、1980年代にバングラデシュのロックバンドの先駆けとして活躍したバンドRenaissanceのドラマー・シンガーPilu Khan。父親が、Dameerの作品のMVにちょいちょい参加していることも、注目ポイントの1つ。
おすすめ曲
おすすめ曲①Believe
2019年のアルバム”For We Are Distant”の収録曲。私がDameerにどハマりするきっかけになった曲。
恋のPTSDについて歌った曲とのこと。そう言われて聴いてみると、イントロやサビ前はクラクラと目眩を感じるような幻想的なサウンドに聴こえるし、Dameerの歌い方も女性に固執している感情を表すような、すごく粘りっ気のある声にも聴こえる。
私がこの曲で特に好きな歌詞が、”Is this hole in me really the shape of you”(僕に空いたこの穴はあなたの形)というとこ。失恋後悲しみに暮れる中で、こんなおしゃれな発想、あります?さすが、センスの良い人は絶望の感じ方にもセンスが光るのだなあ。
MVは中国語で最初に「相信」(中国語で、「Believe、信じる」の意味)と書かれていたり、中華風の服を着た女性が出てきたり。YouTubeのコメント欄でDameer本人は「愛の複雑さを表現するために、Wong Kar Wai(「恋する惑星」などの香港映画で知られる監督)のようなMVを作りたかった」と言ってます。出演は、マレーシアで女優・モデルとして知られるSheena Liamさん。我々のPodcastでは、「マレーシアに住んでいたDameerは中華系の女性に恋をし、その時のことをこの曲で歌ってるんだろうな」なんて勝手な想像をお話ししましたが、そういう背景もあるのか、無いのか、それはDameer自身のみぞ知る。
おすすめ曲②Amar Jaan
先ほども紹介した2019年のアルバム”For We Are Distant”の収録曲のなかで、唯一ベンガル語タイトル&ベンガル語歌詞のある曲。サビ以外のところは全部英語なんですけど、サビに入ると突然ベンガル語になる。
ベンガル語で”Amar Jaan”とは、直訳すると「私の人生」、転じて「私の愛しい人」という意味もあるそう。このベンガル語の意味は、YouTubeのコメント欄で私が質問したところ、Dameer本人が返信をくれました。たくさんコメントがある中で、返信くれるDameer優しい。。
「私の愛しい人」というタイトルでも表現されている通り、この曲は結婚をテーマにした一曲のよう。MVは、Dameerの両親の結婚ビデオを使用しています。レトロ感が漂っていて、味がありますね。
さて、この曲の不思議なところを、2つ挙げます。まず1つ目は、ベンガル語さっぱりの私ですが、意味がわかる英語歌詞の部分よりも、意味が理解できないベンガル語歌詞のサビの部分で、一番多幸感を感じられること。言葉の意味を超越して、メロディー・表現力・声質で、サビに幸せ感の頂点を持って来れるのが、本当にすごい。
2つ目はちょっとマニアックな内容かつ別に音楽のプロではない私の認識が間違えてるかもしれないのだけれど、3拍子と4拍子のリズムが自然に混ざり合って聞こえること。イントロは多分3拍子で始まっているのだけど、4拍子のサビを経て、あれ?二番のイントロ(一番では3拍子だったところ)は4拍子!?という不思議な拍感にハマってしまいます。
おすすめ曲③Bashbo Bhalo
こちらはDameerの曲の中で初めて、全ての歌詞がベンガル語の曲”Bashbo Bhalo”。「元気でね」という意味のタイトルのようです。先ほどご両親が登場した”Amar Jaan”に引き続き、この曲のMVでもDameerの父親が登場します。
ポップさを全面に押し出していた2019年のアルバムの作品とは異なり、この曲は懐かしさ、温かさの感じられる曲となっています。曲全体を通して、メロディに大きな変化がないんですが、その分凝った和音のおしゃさが際立ちます。若干エスニック感も感じられる和音なので、バングラデシュの伝統音楽とも関係があるのでしょうか。
これまで、英語の曲でグローバルなファンを惹きつけ、最近は徐々にベンガル語の曲も制作するようになったDameer。その裏には、以下のような音楽に対する想いがあるようです。
What I would really want to do is kind of move Bangladeshi music forward because actually I feel the scene has been very stagnant for a very long time. We had a lot of innovation in the 70s, 80s, 90s but I think in the 2000s until now we haven’t had any innovation, or very little innovation. So as much as I’d like to show the world what traditional Bangladeshi music is like. I would also want to develop it or make something new from it. Whether that means singing in Bangladeshi or not, it’s got to be something unique and something people haven’t heard before.
https://www.majesticjournal.com/introducing-dameer
「停滞気味なバングラデシュの音楽シーンにユニークなイノベーションをもたらし、世界にもバングラデシュ音楽を示したい。」そんな彼の思いがきっと、英語でもベンガル語でも歌うというスタイル、欧米のポップスの中にもバングラデシュ音楽の要素を取り入れる、という制作の方向性に繋がっているのでしょう。芸術家でもあり、深く、大きい目線でも色々と考えているのか、Dameerくん!?
最後に
以上、Dameer愛をたっぷりお伝えしました。
さてさて、再び宣伝ですが、PodcastでもDameerのことについてお話ししております。
今回のブログ記事では紹介しきれなかった、バングラデシュという国自体のプチ情報(独立の歴史など)、ベンガル料理の情報など、音楽だけに止まらぬ情報を広く深くお伝えしておりますので、お是非にどうぞ。
Dameerをきっかけに、バングラデシュの歴史やベンガル料理にも興味が湧いたのはとても嬉しいことでした。音楽って、もちろん音楽そのものを楽しむということだけでも人生を豊かにしてくれるものですが、音楽をきっかけに、それに関連する様々な知識やカルチャーの扉が開かれるのも、楽しいな〜とつくづく感じました。このブログも、皆さんの扉を開く、とまでは行かなくても扉を軽くノックしてみる、そんなきっかけになれると光栄です!
以上、お読みいただきありがとうございました。
【今回参考にした記事】
-Majestic Journal:https://www.majesticjournal.com/introducing-dameer
Earmilk:https://earmilk.com/2021/03/10/indie-pop-anomaly-dameer-breaks-down-his-debut-ep-for-we-are-distant/
-Mcgill Daily:https://www.mcgilldaily.com/2022/03/an-exclusive-interview-with-singer-songwriter-dameer-khan/
コメント
Thank you so much for writing this up! It is by far the most in depth writeup of my I’ve ever read. I have big dreams, i want to put Bangladesh in everyone’s imagination. Thank you for your support ❤️
Thank you so much for your warm comment.I support your creation and I cannot wait for your upcoming works.