CNNが選出する「世界一美味しい料理」に選ばれたことのある料理ルンダン。
最近では日本でも知名度が高まりつつあり、日本で販売されるルンダン商品も増えています。
しかし、日本のルンダン商品が発売される度に勃発する論争があります。
それが「ルンダンってインドネシア料理?マレーシア料理?」論争。商品によって「インドネシア料理」と紹介しているものもあれば、「マレーシア料理」と紹介するもあり、どちらの国の食べ物なのか、SNSでは困惑の声も見かけます。
今回は、そんなルンダン論争にピリオド。ルンダンのルーツを辿ります。
ルンダンとは?
牛肉などの塊肉をココナッツミルクと香辛料で長時間煮込んだ肉料理。
2017年にCNNによって世界一美味しい料理に選ばれたこともある。
主にインドネシア、マレーシアで食されており、日本で言うスキヤキのような贅沢感のあるご馳走的位置付け。
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こちらの写真は、新宿にある人気インドネシア料理店、モンゴモロさんのルンダン!
日本で販売されているルンダン商品の表記例
まず、日本で販売されている主なルンダン商品と、パッケージに記載された国名をご紹介します。
まずはこちら。東京荻窪で2000年創業のマレーシア料理店「馬来風光美食」のオーナーシェフ、エレンさん監修のレトルトタイプのルンダン商品。
パッケージには堂々と、「マレーシアカレー」の文字。

続いてご紹介するのは、永谷園のルンダンスープ。
「世界のスープ図鑑」というシリーズの、スープタイプのルンダンです。
パッケージには、「マレーシアの伝統的な煮込み料理」と書かれています。
ただし、永谷園さんのHPを見ると、「マレーシアやインドネシアの家庭料理「ルンダン」を手軽に飲めるスープ仕立てにしました。」との説明文が。マレーシア、インドネシア両国を併記しています。

続いては無印良品さんのビーフルンダン。パッケージや無印良品のHPには、「コクのある甘さと香りが特長のマレーシアの煮込み料理です。」との記載が。
このように、日本で販売されている輸入物ではないルンダン商品には、「マレーシア料理」という記載が多いような印象があります。
「ルンダンってインドネシア料理?マレーシア料理?」の結論
結論
「ルンダンは、インドネシア料理なのか?マレーシア料理なのか?」
その答えを、この動画が分かりやすく説明してくれています。
この二人の会話(10:29~)を日本語に訳すと、
ルンダンはインドネシア、マレーシアどちらの国にも属しません。実はルンダンは、ミナンカバウ族にルーツがあります。ミナンカバウ族は、マレーシアにもインドネシアにも住んでいます。なので、ルンダンはマレーシア料理だ、インドネシア料理だ、と主張するのはやめてください。ルンダンは、ミナンカバウ族の人々の食べ物です。ありがとうミナンカバウ族!私たちはミナンカバウ族の料理、ルンダンが大好きです。
つまり!ルンダンは、インドネシア料理でもマレーシア料理でもなく、「ミナンカバウ族の料理」。ミナンカバウ族はインドネシアにもマレーシアにも住んでいるので、インドネシア、マレーシアどちらの国でも食べられている料理になったのです。
所感
日本はインドネシアやマレーシアと比べると、民族の多様性が少ない国。一つの国にいろんな民族が混在している多民族国家や、逆に一つの民族が複数の国に跨っているということのイメージがつきにくい人も多いと思います。
そのため知らず知らずのうちに、「ある国でよく食べられている料理は、その国にルーツを持ち、その国を象徴する料理」といった先入観を持つようになったのかもしれません。例えばパスタはイタリア料理だし、ビビンバは韓国料理だし、麻婆豆腐は中華料理。日本人に今まで馴染みの深かった海外の料理については、たまたまその先入観が間違いではないケースが多かったと思います。
でも、最近東南アジア料理が流行り始めて、従来の「この料理はこの国のもの」という感覚が通用しないケースが多いなあ、と気づき始めている人もいるはず。例えば、「あれ、シンガポールのチキンライスって、タイのカオマンガイと似てる!」とか「ラクサってマレーシア料理店、シンガポール料理店どっちにもある!」という具合に。
東南アジアの国々は、多民族国家が多いため、1つの国の中で様々な民族の料理が食べられていること、逆に1つの料理が複数の国で長年にわたり愛されていること、が当たり前なのです。
今回の「ルンダン(rendang)ってインドネシア料理?マレーシア料理?」論争も、そんな東南アジアの多様性を象徴するようなトピックだと思いました。
ミナンカバウ族とは
さてさて、ルンダンは「ミナンカバウ族の料理」と分かったところで、ミナンカバウ族ってどんな民族?
✔︎人口:約800万人(うちインドネシア650万人、マレーシア90万人、シンガポール1万5,000人、オランダ7000人)
✔︎特徴:厳格なイスラム教徒。世界最大の母系社会。財産や土地は、母から娘に相続される。ミナンカバウ人の男性には、merantau(=「彷徨う」という意味)という風習があり、マレー群島から財宝を探しにあるいは商いを求め、故地を発つ。
インドネシア、マレーシアのみならずシンガポールやオランダにも人口が分布していることが分かりました。(2021年時点wikipedia情報のため概算として捉えてください)
また、ミナンカバウ族の男性は、故郷を離れて各地に「彷徨う」慣習があるということで、これもルンダンがさまざまな地へ広がった理由だと考えられます。
インドネシア風ルンダンとマレーシア風ルンダンの違い
インドネシアとマレーシア、どちらの国でも愛されているルンダン。二つの国で違いはあるのでしょうか。
調べてみた結論としては、それぞれの国の中でもいろんなタイプのルンダンがあり、明確に「インドネシアのルンダン」、「マレーシアのルンダン」という括りで違いを表すのは難しそうです。
ここでは、「インドネシア、マレーシアではこういうルンダンが多い」という大まかな傾向をご紹介します。
インドネシア風ルンダンの傾向
ルンダンの本場、西スマトラのルンダンはココナッツミルクが黒くなり、汁気がなくなるまでじっくり煮込むのが特徴。8時間ほど煮込むこともあるそうです。
ただ、インドネシアは広い。
本場東スマトラ以外のレストランでは、必ずしも黒くて汁気のないルンダンばかりではないよう。
煮込む時間を4時間ほどに抑えて(それでも長いが)、汁気を残した赤茶色っぽいルンダンも多いようです。(この調理法は“kalio”と呼ばれる)
マレーシア風ルンダンの傾向
マレーシアのルンダンは、先ほど紹介した”kalio”と呼ばれる汁気を残すタイプのルンダンが比較的多いようです。
汁気がなくなるまで煮込んだルンダンのように黒さがないので、黒糖やKerisik(ココナッツをすりおろして炒めたペースト)で黒味をつけることも多いとか。
また、インドカレーの影響を受け、シナモン、クミン、カルダモンなどのスパイスを使うことも。
結論。インドネシア、マレーシアには色んなタイプのレシピがある!!!!
日本でルンダン商品を販売する際の表記案
今後も日本で人気が高まりそうな、ルンダン。ルンダン商品も増えていくと思いますので、日本でルンダン商品を販売する際の表記案を勝手に考えてみました!キャッチコピー素人の私の案なので、あくまでも参考程度でご覧ください。
例えば、インドネシアとマレーシアを併記する方法が無難では?
「インドネシア・マレーシアで愛される料理、ルンダン」 「インドネシア・マレーシアの煮込み料理、ルンダン」
流石に「ミナンカバウ族の料理、ルンダン」と書いたら、「ミナンカバウ族って何・・?」と、消費者が困惑してしまうかもしれないのであまり得策ではなさそうです。
まとめ
以上、「ルンダン(rendang)ってインドネシア料理?マレーシア料理?」という謎に迫りました。
どっちの国のルンダンも、美味しいことには変わりない♪
様々なタイプのルンダンを食べてみたいと思いました!
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